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人は、すべて生まれながらにして自由、平等であり、人として尊ばれ、人として生きる権利を持っています。
しかしながら、私たちの地域社会には、社会的身分、門地、人種、信条、学歴、性別などによる不当な差別が今なお根強く残っています。また、あるときは、その差別によって尊い人命をも失うという悲惨な事件を経験してきました。
こうした苦い経験を踏まえ、日本国憲法・世界人権宣言を基本理念とし、1993年に「人権尊重都市宣言」を行ないました。しかし、依然として、同和問題をはじめとし、子ども、高齢者、障害者、女性、外国人などに対する多くの人権侵害が起こっています。
こうしたことから、国際化、情報化、少子高齢化などの社会の急激な変化に対応しつつ、将来にわたって不当な人権侵害を二度と繰り返さないことを固く誓い、差別をしない、させない、許さない、「あらゆる垣根をこえて、あたたかい心で交わり合うことのできる新居浜市」を実現することを決意し、ここに条例を制定します。
私たちは、生まれや姿、かたち、また、言葉や習慣などの違いによらず、だれでも、等しく尊重され、平等に扱わなければなりません。しかし、地域社会には支配する者と支配される者との関係が生まれたときからさまざまな差別が始まり、それは今も続いています。そして、そのことによって若い命を絶った差別事件を経験してきました。
こうした経験を踏まえ、日本国憲法第11条の基本的人権の享有や国連主導の世界人権宣言などを基本として、1993年に明るく住みよい社会を実現させるために、人権尊重都市を宣言しました。
しかしながら、今日もなお、同和問題をはじめとし、子ども、高齢者、障害者、女性、外国人、アイヌの人々、エイズ患者、HIV感染者、ハンセン病元患者、刑を終えて出所した人、犯罪被害者等に対するインターネットや電子メールを悪用した人権侵害などが後を絶ちません。とりわけ、子どものいじめや自殺、不登校また、家庭内での子どもへの暴力、育児放棄、高齢者に対する偏見や虐待など大きな社会問題となっています。
本市においても外国人が増えつつある現状や情報化社会を迎え、マスメディアの発達はいちじるしいものがあり、インターネット、テレビ、新聞、雑誌などの多様な媒体を通しての情報は市民の生活に密接な関わりをもっています。また、少子化と平均寿命の伸びなどにより、高齢社会を向かえるなど、人権問題をめぐる状況は複雑化、多様化の傾向があります。これらのいくつかの社会の変化に対応しつつ、人権尊重の実現は、私たち一人ひとりの課題であることを再確認し、今後ともすべての人の人権が尊重されるまちづくりに取り組んでいくことを決意し、本条例を制定します。
*「あらゆる垣根をこえて、あたたかい心で交わり合うことのできる新居浜市」
さまざまな文化、習慣、価値観等を持った人々が、それぞれの主体性を保ちながら、つながり、また地域間の垣根をこえて、すべての人々が、自ら積極的に考え、あたたかい心で交わり合い、そして行動し、来てよかった新居浜市、住んでよかった新居浜市の実現をめざします。
第1条 この条例は、人権尊重のまちづくりのために、市の責務と市民及び企業・事業者(以下「市民等」といいます。)の役割を明らかにするとともに施策の基本となる事項を定め、市と市民等が協働して人権が尊重されるまちづくりの実現に寄与することを目的とします。
【第1条の解説】
この条例の目的は、人権が尊重されるまちづくりの実現にあります。そのためには本市と市内に暮らすすべての市民(日本国籍や住民登録の有無などを問わず)が連携・協働して人権に関する施策をより一層、総合的に推進する必要性を明らかにしたものです。
第2条 市は、市が実施するすべての分野において、前条の目的を達成するために必要な施策を積極的に推進します。
【第2条の解説】
人権尊重のまちづくりに果たす市の責務は大変重要なことであります。庁内すべての部局が現在実施している施策や日常の業務を人権の視点で見直し、市と市民が相互に連携・協力しながら、人権に関する必要な施策を総合的に推進することを明らかにしたものです。
第3条 市民は、人権が尊重されるまちづくりの担い手であることを自ら認識し、家庭、学校、地域等あらゆる場において、人権意識の向上と人権が尊重されるまちづくりの実現に積極的に努めるものとします。
【第3条の解説】
人権が尊重されるまちづくりの実現を図るためには、市民一人ひとりが、家庭、学校、地域など日常生活の中で主体的に人権意識を高め、お互いの人権を尊重しあうとともに自分自身の問題としてとらえ、行動していくことが重要であることを明らかにしたものです。
第4条 企業・事業者は、自らの経済的活動のなかに人権の視点の必要性を再認識して、事業活動が地域に影響を及ぼすことに配慮し、人権意識の向上と人権が尊重されるまちづくりの実現を図るため、あらゆる差別の解消、就職の機会均等と社会参加が保障される体制づくり等に積極的に努めるものとします。
【第4条の解説】
企業及び事業者は、その存在、企業活動などを通じ、地域や市民との深いかかわりをもち、社会性、公共性を有していて、その社会的責任についての自覚に基づく行動が要請されています。人権が尊重されるまちづくりの実現を図るためには、当事者の一人として行動することが重要でまた、社会的弱者等の就職の機会均等や社会参加が保障される体制づくりなどの取組みを明らかにしたものです。
第5条 市は、市民等の人権意識の普及高揚を図るため、充実した人権教育を推進するとともに、あらゆる機会をとらえて啓発活動を行い、人権尊重のまちづくりに努めるものとします。
【第5条の解説】
人権が尊重されるまちづくりの実現を図るためには、市民一人ひとりが人権意識を高め、子どもから大人まであらゆる年齢層に対する人権教育を行なうことが重要です。このため、市はすべての施策を通して、人権意識を高める教育及び啓発活動を進めることを明らかにしたものです。
第6条 市民等に人権が尊重されるまちづくりの趣旨を周知し、人権について考え行動しようと呼びかけ、人権意識を高めあう日として、毎月11日を人権のつどい日とします。
【第6条の解説】
同和対策審議会答申が出された1965年(昭和40年)8月11日を記念して、11日を人権意識を高めあう日として「人権のつどい日」に設定し、毎月11日、今一度人権について考え行動することを明らかにしたものです。
第7条 市は、この条例に基づく施策を効果的に推進するため、国、県及び関係団体との連携を強化し、推進体制の充実に努めます。
【第7条の解説】
人権が尊重されるまちづくりの実現を図るためには、国、県、及び関係団体の連携が不可欠です。また、学校や市といった公的機関の取り組み以外にも企業・事業者、人権確立のために活動している団体等の連携も深め、推進体制の充実を図ることなどを明らかにしたものです。
第8条 市は、この条例に基づく施策を効果的に推進し、人権侵害をなくすため、市民等とともに考え、総合的な推進に関する基本方針を策定します。
2 基本方針を作成するに当たっては、あらかじめ第10条に規定する審議会の意見を聴くものとします。
【第8条の解説】
人権が尊重されるまちづくりの総合的な推進を図るために、人権尊重のまちづくりに関する基本的な方向、人権意識の高揚を図るための施策に関する基本的な事項、人権に関する課題ごとの施策に関する基本的事項、そのほか人権尊重のまちづくりのための重要な事項などの基本方針を定めることを明らかにしたものです。
第9条 市は、この条例に基づく施策を効果的に推進するため、必要に応じて調査を実施するものとします。
【第9条の解説】
人権が尊重されるまちづくりの実現を図るためには、定期的に意識調査を実施し、市民の人権問題についての意識や理解の実態を把握することは重要であります、また、社会の変化に伴い、新たな人権課題が生じ、人権のあり方も変化していきます。個別の問題で調査が必要な場合も含めて調査の実施を明らかにしたものです。
第10条 市は、人権尊重のまちづくりを推進するため、新居浜市人権尊重のまちづくり審議会(以下「審議会」といいます。)を置きます。
2 審議会は、市長の諮問に応じ、基本方針に関して第8条第2項に規定する事項を処理するほか、人権施策の推進に関する重要事項を調査審議し、市長に意見を述べることができます。
3 前2項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営等に関し必要な事項は、規則で定めます。
【第10条の解説】
人権が尊重されるまちづくりの実現を図るためには、人権施策を総合的かつ効果的に進める必要があります。地方自治法138条の4第3項の規定に基づく執行付属機関で、審議等を行なう位置づけであり、人権が尊重されるまちづくりを推進するための重要事項について、広く専門的な見地から意見を聴くため設置することを明らかにしたものであります。
第11条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が規則で定めます。
【第11条の解説】
条例に関し必要な事項は別に定めるものとしています。
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行します。
(新居浜市同和対策委員会条例の廃止)
2 新居浜市同和対策委員会条例(昭和36年条例第22号)は、廃止します。