昔、角石原のしもの長さわ落しという所で、1人の男が炭を焼いていた。ここで炭を焼いていると、いつも顔のまん中に大きな目玉ひとつしかない、一つ目小僧が天井から下の様子をうかがっていた。 ある晩仕事をしていると、一つ目小僧が小屋に入ってきて「わしの目を見い、わしの目をみい。」と小うるさくいう。この人は肝っ玉のすわった男で、「お前にゃ、目玉がたった1つしかないくせにえらそうにいうな。わしの目を見ろ。」といって、かたわらにあった炭をすくうヨソロを被って「なんぼあるか数えてみい。」とにらみつけた。 昔から一つ目小僧が「目を見い、目を見い。」というのにつられて、目を合わしにらみ敗けたら、一つ目小僧に食われてしまうといわれ、一つ目小僧はこれに驚いたのか、以後、 炭焼小屋に現れなくなったという。 (中村 伊藤静馬 談) |