船木の大久保にも昔話があったろ。餅をつきよって、天狗に子供をさらわれた話よ。 昔ね、せっき(年末)の餅をついていたんよ。その時子供があまりうるさく泣くので、外へ投げ出したんと。 ところが、いよいよその子の泣き声が遠ざかってゆくけね。おかしいねと思って外をのぞいたら、赤い着物のその子が天狗にさらわれて、山の方へ飛んでいったそうな。 さらわれたその子の着物は、どこやらの池にあったといいよったよ。 わたしゃ寝物語りにおばあさん(母)からよう聞いたんよ。 それで年末にはその家ではお餅をつかんようになったいうね。大久保いうたら昔はものすごく山奥だったんよ。 (下東田 徳永 富貴子 談) |