黒島神社は黒島山の中腹にある。長い石段を上がると、垣生山が西に見える。鎮守の森の緑が潮風にそよぐいいところだ。 昔、この鎮守の森にタヌキの1家が棲んでいたそうな。何でも一宮神社の子女郎狸の親戚だそうで、夫婦ダヌキと7匹の子ダヌキがいたそうな。 ここのお父ダヌキは神主さんによくなつき、年よりの神主さんといっしょにたき木を取りに行ったり、近所へ使いに行ったり、いろいろよく手伝いをしたそうな。 ある冬の寒い晩おそく、お宮の石段の方でイヌのほえる声がやかましく聞こえるので、神主さんはどうしたんだろうと思っていると、とんとんと戸をたたく音がして、「神主さん、助けてください。子ダヌキがイヌに食われそうです。」と父ダヌキの声が聞こえてきた。神主さんは年寄りで足が弱いし、夜おそく寒いので聞こえないふりをしていたそうな。あくる朝急いで行ってみると、7匹の子ダヌキは、みんなイヌに食われて死んでいたそうな。 神主さんは、「おお、かわいそうにすまんかったなあ。」といってねんごろにとむらってやったそうな。 だが父ダヌキは神主さんをうらんで、「神主さんの家には七代跡取りが生まれんように。」といったそうな。 それから神主さんの家には男の子が生まれず、娘ばかりで養子が続いたそうな。 註、黒島神社(現在黒島神宮)のタヌキの話しです。子供の頃、祖母にせがんでそのタヌキの穴のあったところを見に行った思い出があります。お父ダヌキの言葉の先に「神主さんが薄情な」がついているともいいます。 (新居浜市黒島 近藤史孝氏 投稿) |